性格によって生まれるAI利用格差
最近、AIの進化について語られるとき、多くの場合「能力格差」の話になる。
AIが仕事を奪うのか。
AIを使える人が勝つのか。
しかし実際にAIを触っていると、少し違うことに気づく。
AIの世界で起きているのは、能力の差というよりも使い方の差である。
そしてさらに言えば、その使い方の差は性格や思考スタイルの違いと関係している可能性がある。
AIは特定の思考に向いている
現在広く使われているAI、特にChatGPTのような生成AIは、基本的にテキストベースの対話で動く。
この形式には特徴がある。
AIをうまく使うには、
・問いを整理する
・前提を分解する
・仮説を立てる
といった思考が必要になる。
つまりAIとの対話は、自然と構造化された思考を要求する。
このため、論理的に物事を整理するタイプの人ほど、AIを使いやすく感じる傾向がある。
心理学の性格分類(MBTIなど)で言えば、NTタイプやSTタイプの人は比較的スムーズにAIを使いこなすと言われることが多い。
性格によるAI利用格差
ここで一つの仮説が出てくる。
AIとの相性は、能力ではなく思考スタイルによって決まるのではないか。
もしそうなら、AIの普及によって生まれる格差は、能力格差ではなく認知スタイルの格差ということになる。
論理的に問いを作る人はAIを思考装置として使い、そうでない人はAIをうまく使えない。
この可能性は、いくつかの研究でも指摘され始めている。
あなたはAIに好意的だろうか、懐疑的だろうか。
あなたの周りの人はどうだろう。
真面目にその性能を捉えようとしている人もいれば、遊び相手にしている人もいれば、辞書代わりにしている人もいるのではないだろうか。
しかしAIはテキストだけではない
ここで一つ、見落とされがちな点がある。
AIは必ずしもテキストだけではないという点だ。
現在の生成AIは
・文章生成
・画像生成
・動画生成
・音声生成
といった複数の表現形式を持つ。
そして、この情報形式(モダリティ)によって、AIとの相性は変わる可能性がある。
テキストベースのAIは、論理的な思考に向いている。しかし画像や動画はどうだろうか。
視覚は想像力を刺激する
人間の想像力を刺激するもっとも強い手段の一つは視覚である。
言葉よりも、一枚の画像の方が直感的に世界を伝えることがある。
画像生成AIは、この領域に直接働きかける。
頭の中のイメージを言葉で説明すると、AIがそれを視覚化する。
このプロセスは、論理というよりも感覚や直感に近い。
そのため、感情や体験を重視するタイプ、いわゆるSF型の人にとっては、テキストAIよりも画像生成AIの方が自然に使える可能性がある。
そうは思わないだろうか。
AIは一種類ではない
AIとの相性を語るとき、しばしば「AIが得意な人」「AIが苦手な人」という単純な分類がされる。
しかし実際にはそうではない。AIにはさまざまな形式があり、それぞれが違う思考スタイルと結びつく。
テキストAI
→ 論理思考に強い
画像AI
→ 視覚想像に強い
動画AI
→ ストーリーや感覚に強い
つまりAIとの相性は人 × AIの形式の組み合わせで決まると考えられる。
AI格差は固定ではない
もしAI利用格差が性格によって生まれるとしたら、それは少し怖い話にも聞こえる。
しかし重要なのは、性格は制限ではなく傾向であるということだ。
論理思考が得意な人はテキストAIから入るかもしれない。
感覚的な人は画像生成AIから入るかもしれない。
入り口が違うだけで、AIの世界にはさまざまな使い方がある。
そして私たちはどのようなタイプであろうとも、一つのAI形式しか使えないわけではない。
文章AIを使いながら画像AIを使うし、動画AIを使いながら作曲AIを使う。
そんな利用領域の横断可能性の高さを持っている。これはAI自身にはない自由さだが、やがてこの横断可能性を高められたAIの進化も見えてくるはずだ。
つまり私たちが元来持つ多様性という営みは、そのままAI利用の多様性へと繋がっているのだ。
これは未来の希望になると思う。
AIと人間の関係
AIは人間の代わりになる存在なのか。それとも、人間の能力を拡張する存在なのか。
この問いにはまだ答えが出ていない。ただ一つ確かなことがある。
AIという道具は、人間の思考の特徴をこれまで以上にはっきりと映し出すようになった。
AIは人間を変えるのかもしれない。
しかし同時に、人間の違いを可視化する装置でもある。
そしてその認識の先には、我々は何者なのかという根源的な問いを映し出す鏡になるであろうということだ。
今の私たちが踏まえておくべきことは、その鏡がどれだけ精巧なものになるのかは分からないということだと思う。
この連載: 観測者という主体とAI (1 / 3)
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