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トレード戦略とシナリオ作り

短期的にせよ中長期的にせよ、トレードするためのシナリオというのがある。つまりトレンド継続の中でこの形になったら押し目買いをしようとか戻り売りをしようということである。
チャートに刻まれた価格を元に組み立てる売買の機転をトレード戦略という。重要なポイントはあくまでチャート上に確定した価格の推移によって作られるシナリオということである。

価格はすべての事象を織り込むというダウ理論の原則をどのように解釈しているだろうか。
自然災害などを含めた需給に関するすべての要素が平均価格に織り込まれているという。
政策金利や経済活況を示す指標結果で動く、大規模災害があれは保険会社が支払う保険金の確保のための需要変化で動く、様々な根拠の元に価格は変動していくが、中にはその理由の詳らかではない値動きもある。
大衆の注目度に合わせて予測可能な値動きの方向もあれば、口先介入や突然の政変などはほとんど予測不能な上、特別な理由付けのできない瞬時の需給バランスの変化をローソク足形成の前に知ることはできない。
従ってチャート上の値動きすべてを予測することはできない。

だが、起こったことはすべて過去のチャートに刻まれている。いつどこで何が起こったか分からなくても価格は誰の目にも明らかな状態で刻まれている。
テクニカル分析の根幹をなすこの事実の受け止めを正しくしなければならない。

政策金利の発表や雇用統計などの指標発表はその日時があらかじめ公表されている。
リスクマネジメントととしてそういった結果発表時はトレードを控えることも1つの手立てになるが、逆のパターンに幻想を抱く不可解さを我々トレーダーは持ち合わせている。
つまり結果の予測である。指標に関して言えば前回の結果と今回の予測値は調べれば容易に手にすることができる。
結果の良し悪しによって価格は変動するが、その予測値に基づいて、この結果発表のタイミングで価格は上昇するとか下落するであろうというシナリオ作りだ。

ここにある大いなる矛盾は、指標結果の数値がチャート上の価格推移の値幅を正確に示さないという点だ。
+0.1%の結果はどの通貨ペアの価格を何pips動かすのか?
10万人の雇用減という結果はどの通貨ペアの価格を何pips動かすのか?
そこに有効的な再現性はない。例え前回から改善した、または悪化したとしても、予測値通りの結果が出たときと予測値から大幅にズレた結果が出たときの値動きも違う。
また経済状況的に悪い状況が続いているときの指標結果が予測値よりもさらに悪かったとしても、それが市場の想定の範囲内であるとされた時の値動きは微々たるものであった、ということもままある。
このような予測値を用いたトレードは、チャートの示す事実によってトレードをするという一貫したテクニカルトレーダーの精神とは大きく乖離している。
また結果発表の日時を用いたシナリオ作りについても同様のことが言える。
つまり今週はこの日にこの指標発表があるので、市場は様子見を決め込んで発表の時までは大きく動かないだろうとする、それまでの価格推移を前提としない幻想的なシナリオ作りだ。

このようなシナリオの元にチャートを見ていると、思いのほか指標発表前から大きく動くことがあるということに気づく。
つまりチャートはそれまでの価格推移に基づいてその瞬間瞬間の需給バランスを反映しながら常に新しい価格を刻んでいるということだ。そしてあらかじめ想定していたイベントとは別のイベントによって動くことが当たり前にあるということでもある。

一貫したテクニカルトレーダーはチャートに刻まれた事実によってトレードしている。
テクニカル分析の根幹は価格の推移が実現しているという点にある。
過去のチャートが指標発表の結果も自然災害のあとの値動きもすべて刻んでいるならば、その平均価格は明らかにチャートの真実だ。
分析の仕方やトレードの根拠となるものが過去の値動きを元にしているとき、例えばそれがダウ理論上のトレンド継続を示すならば、指標結果が予測値とズレていてもその平均価格はチャートに織り込まれた姿で実現する。そうでなければテクニカル分析は成り立たずダウ理論も成立しない。
そして価格はすべての事象を織り込むということと、未来の価格は予測不能であるということは両立する。
なぜなら確定した価格と未確定の価格についての論理だからだ。確定した価格は予測するものではないし、未来の価格はその間に起こるすべての出来事が実現するまで価格に織り込まれないのだ。

価格はすべての事象を織り込むという言葉に幻想を抱いて、まるでチャートの未来の値動きまで予測可能だとするシナリオ作りは、はっきり言ってバカげている。論理が破綻しているということに気づくべきだ。
リスクマネジメントの観点からそういった指標発表時のトレードを控えるという判断は正しい。なぜなら未来の価格は予測不能だからだ。
この指標の結果が悪ければ価格は下落するだろうという前提を身勝手に設定し、前回はこの数値で今回は悪い予測値であるから、結果発表前に売りを仕掛けようというのは間違いだ。なぜなら未来の価格は予測不能だからだ。
誤ったシナリオに基づくトレードをしたとき、天底だと思った場所はそこに至るまでの途上であったとか、予想通りの結果だとしてもストップ狩りのヒゲに狩り込まれてから想定した方向へ推移していくという悲惨な目に合う。

賢明なトレーダーはチャートに刻まれた事実に基づいてトレードする。事実とはすなわち確定した平均価格だ。ローソク足と言い換えてもいい。
結果の良し悪しに関わらず確定するまで待つということだ。その確定した価格によってトレードの可否を判断する。


ではなぜ人はそんな不可解なトレードをしてしまうのか。
それは相場を当てることに熱狂し、大衆の動き出す前に自分だけがその値動きに乗れるのだと優越感に浸り、大きな利益を得たいと思うからだ。
ここが相場の天底だと、あるいは動き出しの場所に違いないと信じて、このトレードによって利益を大きく伸ばしたいとか、これまで被った損失を減らしたいと思うからだ。

希望がトレーダーを盲目にさせる。
価格はすべての事象を織り込む。
幻想に囚われたトレーダーのSLを巻き込んで価格は確定していく。
チャートに希望はないのだ。



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