愚か者のFX-11-

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トレードを管理する

およそトレーダーがチャート上でできることはあまりない。
トレードをするかしないかの判断と、トレード中の経過観察、そして手仕舞いである。
リスクリワードを考えるということをどのように捉えるべきなのか、何となく額面通りに受け取りながらも何か違うような気がしているままトレードをしていないだろうか。
リスクとリワードは日本語にすれば、損失と利益だ。リスクリワードレシオとまで言う場合は、トレードの期待利益と期待損失の比率のことを言う。
このリスクリワードレシオが高いと勝率が低くてもトータルでプラスにすることが可能なので、トレードの多様性に直結する。
よくトレード前に損切り位置と利確位置を決めてからトレードせよという話がある。そしてその比率が1:2から1:3程度となるように設定する。それがリスクリワードを意識することだというのである。
果たしてこれは正しいのだろうか?

目標とする利益確定ラインと逆行した場合の損切りラインを決めることは何を意味するのかというと、だいたい以下の2点で考えられている。
①過大な利益を妄想せずに確たる判断材料を元に明確な決済ラインを設けることでトレードの質を高める
②想定とは違った値動きを見せた場合に、過大な損失を防ぐための資金防衛を徹底することで口座資金を安定して守る
これは半分正解で半分おかしいと思っている。

高められるトレードの質というのはすなわち、一貫性のあるトレードを繰り返すということに本質がある。規律あるトレーダーは常に同じトレードを繰り返す。
そうすることで成績が安定する。ちょうどプロスポーツ選手が常に同じフォームで身体操作をしているのと同じことである。優れた選手の動きは一貫性があり優れた成績を収めている。
また急激な値動きや目を離している間の値動きによって、思いがけない逆行によって大きな損失を被らないようにするために予めストップを決めておくということも大事なことだ。
この二つの行為によって、利益確保と損失制限をトレード前に設定できるために一貫したシステムとして機能する。
同じトレードを同じように繰り返すのだ。

ここで重要なことは、これはトレードをする前にトレードを管理下に置いてからチャートに臨むということである。
ではその管理下にあるトレードが管理を外れる瞬間が来たらどうなるだろうか?
たとえば週末は市場が開いていないのでその間にある値動きの変動要素は完全にコントロール外だ。ストップラインを超えるような大きな窓が開けば、想定外の損失を被ることになる。

あるポジションを保有しているとする。
例えば天底からの反転に乗り込んで含み益が100pipsにでも迫ろうかという状況だ。閉場直前の、まだ窓の外が暗い早朝にあなたは一人チャートを見ている。
どうやらこのまま放置して週末持ち越ししても利益はまだ伸びそうだと考えられる。根拠はある。例えば普段から監視している1時間足でいつものように観察しているが、陰線が連続しており相場のモメンタムは途切れていない。
自らの分析によるところのネックラインにはまだ少しゆとりがある。利益確定ラインまで伸びていけばさらに25pipsから35pipsくらいは上積みできそうだ。
すでに100pipsの含み益があるし、ストップは建値に移動させているから、仮に多少リバッても大丈夫だろう。あと20pips上積みできれば今月の儲けは目標に届きそうだからぜひともものにしたい。
こんなことを考えながらチャートを見ている。

あらかじめ設定したリスクリワードのラインはきちんと事前に設定しており、想定通りの方向へ値動きは進行している。つまりうまくいっているのである。完璧に事前にコントロールされたトレードだ。しかし週末で閉場までもう間もなくといったところだ。ここで何をどうするかですべては変わる。

週末の間は、保有ポジションは完全にコントロール外に置かれる。これではトレードを管理できていない。事前に決めた利益確定ラインと損切りラインによってトレードを管理したはずなのに、週末を迎えると強制的に管理外に置かれてしまう。
ここでトレーダー心理が囁くように邪魔をする。

利益を期待してしまう。損失を甘く見積もってしまう。利益を妄想して潜在的なリスクを軽んじてしまう。リスクリワードの本質的な考え方がここで破綻する。
トレード中のすべてのポジションは決済するまですべて仮定のものであり、潜在的なものだ。何もかも確定していないのである。
リスクリワードを考えるとは、潜在的な利益と潜在的な損失を考えることであり、トレードを管理するとはその潜在しているものを明確に完全に管理するということである。

管理とはすなわち手仕舞いの判断だ。
トレード前にシステム通りのトレードエントリーをしたならば、あとは経過観察と手仕舞いの判断である。
手仕舞いの判断が必要になる時というのは保有しているポジションが管理外に置かれる危機に瀕した時。すなわち閉場直前だ。ここでしっかりと手仕舞いするかどうかで、トレードは一貫した管理下に置かれているかどうかが変わる。
リスクを想定してリワードを期待するのと、リワードを確定してリスクを回避するという違いである。

規律あるトレーダーが一貫したトレードを繰り返せるのはこういうわけだ。
手仕舞いするまでがトレードであるならば、保有中のポジションは一貫して管理下に置かれなければならないのだ。
それがリスクリワードを意識するということだ。

短期トレーダーはこういったメンタルで相場に臨むが、スインガーとなると週末持ち越しも含めたポジション管理が必要になるのでスインガーに対しては別の考え方になるということは留意されたい。
そして常にチャートを監視することが経過観察ではないということも但し書きしておく。

ところで1:2とか1:3は計算上の持続可能性を高めるために必要な数値となる。この比率を維持する限り、口座残高は増えていくことになる。
これは計算式であるというところが重要なポイントだ。
チャートは1:2や1:3で動き続けているわけではない。波の中を切り取って1:2や1:3に当てこもうとすると、その切り取った枠外の波の動きは想定外ということになる。
なぜなら1のリスクに対して2のリワードを期待する時、その1が口座残高に対しての場合とpipsに対しての場合で、明確にその波の切り取る枠の大きさが変わるからだ。
100のサイズで動く波の中の20の枠の範囲でリスクとリワードを求めることは波の値動きを無視した範囲設定だ。
なぜなら100のサイズで動く波の期待値は20の枠の範囲を遥かに超えている。そしてその潜在的損失もまた然りである。

トレーダーはチャートを支配することができない。しかしトレードするその枠の範囲を自分の都合のいい場所に動かして設定することができる。これは自分本位のトレードだ。
これではいけない。チャート本位のトレードが理想だからだ。

チャートの示す波の大きさを知ることが正しいリスクリワードの範囲を設定する手立てになる。その波のサイズに合わせて損切と利確を求めることがチャート本位のトレードだ。
我々はチャートの値動きに従うのだ。支配するのではない、抗うのでもない、ただ単純に追従するのだ。
チャート通りに動く波に追従したトレードにはストレスがない。
そしてトレーダーは波のサイズに合わせてトレードをコントロールすることができる。レバレッジを抑えることで過大なリスクを背負うことなくトレードできる。
あるいはレバレッジを引き上げてトレードすることで10のサイズの波を実質的に100にすることができる。波のサイズさえ執行時間足を変えれば拡縮可能だ。

ロット管理の本質はそんなところにある。自分本位ではなくチャート本位で考える。それでその波がもたらす本当のリスクリワードを知ることができる。こうした統合的な思考がリスクマネジメントとして機能する。


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