相場を逆巻く風③

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未来の象徴――主体性とは仕分けではなく咀嚼――

相場が過熱していると感じる時、人は情報を集める。
ニュースを追い、SNSを眺め、誰かの見立てに耳を傾け、チャートを何度も開く。そうして「いま何が起きているのか」を把握しようとする。

その姿は一見、冷静な分析に見える。だが実際には相場を見ているようでいて、相場ではなく空気を見ていることがある。
情報を集める行為は、ときに主体性を持った行為ではなく、主体性が溶け始めた兆候として現れる。

ここで一つはっきりさせておきたいことがある。
主体性とは、受け取った情報をどのように仕分けるかではない。
「重要」「不重要」「賛成」「反対」「正しい」「間違い」――そういった棚に、情報を手際よく並べることが主体性なのではない。

むしろ、過熱の風の中では、この仕分けが上手い人ほど危うい。
分類は安心をくれる。整頓は錯覚をくれる。
整理が進むほど、「自分は分かっている」という感覚が強まる。しかしその感覚は、相場に対する理解ではなく、空気に対する同調の速度かもしれない。
前回の記事では、私なりに観測を事実ベースで並べた。
だが、それを読んだことで「風を理解した」と思えたとしたら、それは思い上がりに等しい。
それは理解ではなく、ようやく世の中で起きている変化に追いつけた気がした、という感覚なのだ。

これだ。これなのだ。

知るということの危うさは、理解に直結しないことだ。
人は情報を整理しただけで、理解できたと錯覚する。だがそれは分類にすぎない。
「では自分はどうするのか」という行動に繋がらなければ、意味がない。

主体性とは、咀嚼だ。
受け取った情報を噛み砕き、熱を冷まし、異物を取り除き、自分の言葉と行動に変換することだ。
言い換えるなら、情報を自分の観測軸の言葉に翻訳すること。そんな探究的行為なのだろう。私の本懐でもある。

翻訳できない情報は、まだ噛めていない。
噛めていないものは、飲み込むべきではない。
飲み込めば、それは自分の意志ではなく、外から吹いてきた風が体の中に入り込むだけになる。

過熱期にまず守るべきものは、資金でも、勝率でもなく、咀嚼する速度だ。
焦って飲み込まないこと。結論を急がないこと。
未決のまま持ちこたえること。
その遅さこそが、相場の中で帆を握り続けるための主体性になる。
象徴的と思えるような出来事が起こったとしても、それが売り買いのシグナルに見えたとしても、どこまでも相場に希望はない。それは未来の象徴にはなれない。
相場において“意味ありげな出来事”は多くあるが、それが「未来の象徴」であるためには、過去の合意の積み重ねに位置づけられて初めて意味を持つものだ。

矢継ぎ早に現れる情報の奔流に飲み込まれまいと必死に掴もうとする行為は、皮肉にも理解から最も遠い行為だったのだ。
私はそういうことを最近になって自覚した。

思えば私は情報の咀嚼に時間をかける人間だった。
例えば気になった楽曲をダウンロードしても、車でドライブする時のプレイリストに入れるのは何か月も経ってからだった。何か月もかけて自分の中になじませるような月日が必要だったのだ。
そんな話を友人にしたらかなり驚かれて、その時に自分がちょっとおかしいということに気づいたという雑なエピソードがある。

相場においては、チャートを眺めていてよくわからないと思えば、息抜きを兼ねて他の情報源を探したりする時、何か納得感のある意見や明解な主張に出会うと、急に霧が晴れたような気分になることがある。
それで再度チャートを見直してみると、「なるほど、こうか」と一瞬思うものの、トレード行為自体には繋がらないなんてことがある。
これが理解した気になっていても咀嚼できていないということだ。
トレードは過去の相場の流れから順に把握していく一連の行為だ。スポット的な照準で行うものではない。
スポット解説をしたものを読んでも、そこに至るまでの流れがすべて引っかかりなく自分の言葉で再解釈できなければトレードできないのだ。

私は流れの中に身を置く。
最高値・最安値を元に主流となっている波形構造を理解し、その構造の崩れるところを見極める。それは上位足に準拠するものでなければ高い信頼性を維持できない。
こんな一文でまとめられるようなシンプルさで相場を咀嚼する。
難しい分析の目は、自分の中のずっと奥底にあって、常に揺らぎのない静かな水面を維持している。




相場を予測することから身を切り離して、これまで何があったのかを理解しようと努めるようになった。
今この瞬間の値動きにつられることなく、大衆の合意した場面を見極めようと努めている。

私は相場を振り返る。
それでようやく理解することができる。だからトレードができる。

積み上げられた過去の合意こそが、未来の象徴だ。







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