フラクタルの世界①

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私の中の定義においては、過去の値動きが現在の値動きを示唆する時、その波形が類似している事象をフラクタル構造もしくはフラクタル現象と位置付けている。

実用上の読み解き方をもう少し突っ込んで考えてみると、上記の記事の中で触れているような世間一般のフラクタル構造論を用いたやり方として、日足に現れるNの波動が1時間足にも表れた時に、適切な箇所からエントリーすれば日足のトレンドに乗っていけるといった解釈を鵜呑みにしてはいけないと考える。
これは要するに、マルチタイムフレーム分析と世間一般のフラクタル構造論を混ぜ合わせた分析と言い換えることができる。
一般的に説明されるマルチタイムフレーム分析とは、異なる時間足のチャートを比べることによって、チャートの方向感を掴もうとする試みである。長期足(例えば日足)のトレンドを確認し→中期足(例えば1時間足)で狙う方向を定めて→短期足(例えば15分足)でエントリー個所を見つけるというようなやり方である。特筆すべき点として各足の方向が揃ったタイミングを狙うことによって大きく利益を得られるという注釈がつくことが多い。

理路整然としているし納得できる説明だと思う。しかし相場の世界というのは往々にしてそんなに分かりやすい波ばかりではないし、こんなはずじゃなかったという動き方をすることもある。
分かりやすい波だけを狙うとか、こんなはずじゃなかったと思った原因を自己反省して次回に活かすとか、やりようはあるものの、それらは本質的な解決に至るまでには大きな隔たりがあるように思う。
日足にNの形が見えたので執行足(普段見ている時間足のチャート)でNの形が見えたらエントリーしよう。これだけで到底トレードできないのは、少しでもトレード経験がある者ならわかる。
日足が上昇しているから15分足で上昇している時にエントリーしようと思うことはできても、では実際どこから…??となるのである。

チャートの本質は短い時間足から長い時間足へと変化していくということだ。過去から現在に至るローソク足の変遷がそのスケールを変えながら短期足の高値安値を孕んでいるということだ。
大きな時間足が小さな時間足に影響を及ぼしているのではなくて、過去の時間足が現在の時間足に影響を及ぼしているのである。過去の波から現在の波だ。
だから過去の時間足が示した価格はその水平線上と斜線上に影響力を示す。

下記のトレードはフラクタル構造を念頭に置いてトレードしたものだ。

チャートには支配的な角度があると思っている。
波の最高値と最安値をゾーンとした時にその水平線上と斜線上に現れる。それを自分の中では支配波とか支配波形と定義している。その支配下にあるものは継承波とか継承波形という形で認識している。
下記のチャートでいうと黄色BOXの波を支配波として見る。基本的には今見ている範囲の中で最も天底に広い波をまず見つける。マルチタイムフレーム分析と絡めると月足から順に見ていくがそこは割愛する。
この支配波は黄色BOXの最高値と最安値の水平線及び黒チャネルの角度とその範囲に影響を及ぼす。
波の始まりは水色のWボトムの最安値である。このネックラインである緑水平線を上抜けた波を1波と見ていく。だいたい大きな波の中には2つか3つ程度の中小のトレンドが見える。3波は1波以上というエリオット波動論に基づきカウントしていく。
するとどうやら水色の3波と黄緑色の3波があって、全体として赤い波の5波動が見える。これはあくまでこの時の私のカウントの仕方なので実際にはさらに多くのカウントによって見える波がある。

この5波動を経て水色BOXにてWトップを形成したのだが、このWトップは始まりの小さな水色の波で示したWボトムの影響を受けて発現したものと分析した。つまりこの黄色BOXの高値安値の範囲の左側にはさらに大きな支配波があって、この黄色BOXと水色BOXの波はその支配下にあったということである。

トレンドラインとして引ける紫の上昇トレンドラインがあるが、自分の中の定義としてトレンドラインを割ってきた波を4波と見るという見方も持ち合わせている。4波とするならそのあとは5波であるから4波の割り込みからすぐに売りで追従することはしない。その代わりにネックラインを引く。それが青い切り上げラインと黒い切り上げラインだ。

5波動をカウントしたのに別の5波目を待つのかという混乱が生じるように思うが、なんのことはない。整合性があればいいのだ。推進波と修正波という波の読み方もある。波の取り方はたくさんあるが、重要なことはそれぞれの波が3波5波を完成したかどうかだ。
エリオット波動的5波は完成した。自分の中の定義上の5波の完成を待てば、2つの根拠から波が完成したと結論付けることができる。さらにここで現れたのはWトップである。天井圏に現れるとされるチャートパターンだ。
この3つの根拠はチャートにおいて全体の合意が取れたと解釈するに十分だと思われる。

話を戻して、この時していたことは、紫トレラン下抜けを4波とした時の5波動目の発生と、2本のネックラインへの反応を観察することだった。
フラクタル現象は過去の波が現在の波へ自己相似性をもたらすことだから、底値のWボトムは天井圏でのWトップをもたらすかもしれないという考えがあったので、Wトップの形成を待つことができた。
なるほどと思うかもしれないがそれだけだと根拠としては少し弱い。実際にはこの画像に見えている赤い下降チャネルからの影響も受けている。

青いWボトムからの切り返しで5波動を観測した時に、赤チャネルを引いた。高値と高値を合わせた赤いラインを用いてチャネル底を探すと、左側に存在したさらに大きな支配波の中に印象的なWボトムを発見したので、その底値に合わせてみるとそこに見えたのは支配的角度とその自己相似性である。過去の波は現在の波へその水平線上と斜線上にその影響を及ぼすというフラクタル現象の定義に合致している。
こういう前提があったので先の画像の中でもWトップの形成を待つゆとりが生まれたのであった。


Wトップ後は、その下落が切り上げラインを割り込んできた際、そのリテストを待っていた。
トレード履歴の記事でも書いていたが、Wトップ右肩からの下落がネックラインの交点を境にして1:1ぐらいの抜け方をした。ライン抜けが1:1くらいだとだいたいどこかしらの水平線を目安にリテストが入ることが多いので、この場では様子見をしていた。
するとネックラインへのタッチと共に、MA帯を抵抗域とするネックゾーンへのリテストがあった。ここから売ることもできるが、ではどこまで狙えるかというとまずは直近の波である。
青い波は1波と3波が同じ値幅である。基本的に3波は1波の等倍以上のエネルギーを持っていると考えているのでまずは直近の波で3波を仮定する。
するとそこには明確な押し安値の水平線と支配的な角度をもたらす斜線があった。だから売りを仕掛けたならひとまずの出口はここになると推定できる。
その後の切り返しが再度Wボトムを作った。Wボトムが機能するには黒チャネルの天井と赤チャネルの天井を抜けていかなければならない。だから待った。
待った末に上抜けせずに下落したので、ここからが本気下げの波の始まりと捉えることができた。Wボトムの否定はその形が容易に見えれば見えるほど、信頼性の高いチャートパターンゆえに溜まったポジションも巻き込んで大きなうねりをもたらす。
結果的に支配波の底まで到達する波となった。
波の最後は黄色水平線を下抜けたものの、週足ローソクでみると十字線となってその実体を水平線内に収める律義さが垣間見える。月足も実は実体がこのラインで収まっていたと思う。
こうして天底すべてを飲み込んだ波は最後の週足月足レベルのローソク足が底値を示唆して反転していったのである。
チャートの中で最も基本となるのがN波動だ。それがMとなりWとなる。
波には支配波がある。その水平線上と斜線上に影響を及ぼす。その中に自己相似性をもたらすものが見えた時、大きなうねりの存在に気付くこともできる。

たくさんのフラクタルがそこかしこにある。そういうものを拾い集めていくのが面白い。

  • チャートの左側に大きな波を見つけて支配波とする
  • 波が完成しているかどうかを確認する
  • 水平線と斜線を確認する
  • なにやら同じような値動きをしているところを探す
  • その再現性を元にトレード戦略を立てる
美しきフラクタルの世界を実用的な取扱いに落とし込もうとするとたぶんこんな感じになるのだと思う。
とはいえ、どこもかしこも影響し合いながら進む波の姿の中から有用な形を見つけていくというのはそう簡単ではないかもしれない。
信じたものに裏切られるなんてこともたくさん経験してきたが、やはり待ってみるということが大事だと常々思う。
チャートにはどこまでも続く未来がある。未確定の未来は自分が思っているよりずっと遠くまで続いている。そう思うと少しくらいはゆとりが持てる。
今この波に乗れなくとも次の波がすぐそこまで来ているものだ。

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