相場のフラクタルと隣り合うカオス②

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今回は実戦における相場認識と出口戦略について考える。
本記事は、相場における「フラクタル構造」と「カオス的観測」の理論を実戦で応用する方法を解説するシリーズの後編となる。
前編「相場のフラクタルと隣り合うカオス①」では理論と哲学的視座を中心に展開した。
本稿ではそれをチャート分析に落とし込み、エントリーから利確までの設計に結び付ける試みを実施している。
この記事の中で、観測軸の固定が何よりも重要な要素として整理した。
私の相場観はその相場の支配構造をどのように見るかということに集約されている。
トレンドラインやチャートパターン、エリオット波動論やグランビルの法則などはその波に乗っていくための手法で、認識するという一点においてはこの構造把握こそが要になる。

※「観測軸を固定するとは何か?」については、前回記事「相場のフラクタルと隣り合うカオス①」の『整合性の正体』パートにて、構造否定の1波がなぜ観測軸の定義とリンクするのか、その理論背景を掘り下げている。


構造否定とは相場を構造で見ることから始まる。
ダウ理論の説明で使われる、1,2,3のリズムで描かれるN字の波は文字通り直線で表現される解説画像が多い。
画像の1枚目などはよく目にする説明画像だと思う。
このピンク水平線の高値を超えることによって、トレンドは完成する。そして2枚目の画像のように高値と安値を切り上げていくことでトレンドは継続していくのだ。
この基本に立ち返って改めて考えると、N字のトレンド構造においてどこがこの構造を否定するポイントになるのかというと、押し安値を割り込んだ時だ。
厳密にはトレンドの転換シグナルが点灯した状態と言える。
3枚目の画像において、水色水平線を割り込んだこの場面は、転換シグナルが点灯し、トレンドレスになった状態だ。
これだけでは下降トレンドは発生していない。下降トレンドが発生するには、高値と安値の切り下げが条件だからだ。
4枚目のような形がそれである。
このような一般的な説明を聞いて、「なるほど」と思ってチャートを開くと、途端に戸惑う。なぜならチャートは一本の線で描かれていないからだ。
たくさんのローソク足の集合体で、過去から現在に至るまでの蓄積がある。一方的に見える進行もよく見れば小さい波や大きな波があって、画像のように切り取った場面はどこにもない。
唯一その始まりはそのチャートの始まった時だ。

そんな相場の事実の前では、自分は何を見ているのかという観測軸を明らかにする必要がある。
私は波を過去から現在に至る流れの構造と解釈する。
天底を示す高値と安値で結ばれた支配波はその水平線と斜線においてその影響を及ぼす。その影響を受けるのが継承波。
これが相場の自己相似だ。
何もトレンドの相似だけを言うのではない。トレンドを分解した個別の波にも影響はある。それがフラクタル的理解だ。
このような波の構造の中に、エリオット波動論に代表されるような波動観測がある。
推進5波動と修正3波動だ。ダウ理論とエリオット波動論の整合性はこのカウントされる波の中にも小さな階層があることだ。
1波の中にはさらに小さな5波動がある。2波の中にも3波動がある。3波の中にも、4波、5波の中にも、修正波にも。
これは上位足から下位足に連なるフラクタル構造そのものだ。
私の定義に言い換えれば、過去足から現在足へと連なるカオス的振る舞いであり、その結果として相似した波が生まれたということになる。

このフラクタルとカオスに構造を紐解くカギがある。
画像には赤ダウントレンドラインと青ダウントレンドラインがある。
黒水平線は直近の戻り高値だ。画面下部を横たわる3本の黒斜線はチャネル底を示すロワーラインとなる。
この2種のダウントレンドラインと戻り高値を超えた波を1波とカウントしてみる。
フィボナッチエキスパンションを当てると161.8%ラインで価格は大きく反応しているため、この1波の選定は妥当と思われる。
また相場のサイクルを示す、フィボナッチタイムゾーンを当てた画像で見ると、その周期性も妥当と言える。
タイムゾーンは価格の到達時期を見るというより、トレンドにおける波の性質が変わる節目を示すような使い方をする。
5~8のラインが一般的には1つのトレンドの一時的な到達点と解釈されることが多い。
今回の場合は青垂直線の示す8.0のラインとエキスパンションの161.8%ラインが交差する付近が目標値としての設定で申し分ないと思われる。
黄色四角部で大きく反応を示していることからも大衆の合意はここに形成されていると解釈できる。

問題はここからだ。
私は主に1週間以内にトレードのエントリーから決済までを完結している。週またぎをするとしても2週くらいまでだ。
そこから考えるとこの波のスパンでずっとポジションを保持することはできない。
そこで用いるのが「構造否定の1波」だ。
通常の1波の定義が最安値を起点とするのに対して、私はその構造を否定した波を1波と定義する。
画像の黄緑色で示した部分だ。黒水平線の位置も最高値のヒゲ先ではない。
先ほどの画像と違って、こちらのチャートには4時間足の上位となる日足のローソク足をオーバーレイさせている。
黒水平線は、その日足のローソクの実体が揃っているところに引いている。
つまり上位の合意形成ゾーンとして、ここが真の直近戻り高値ということになる。
このラインを実体を伴って上抜けた波を1波とする。これを基本の定義とすることによって、私は常に直近の波をフォローしていくことができる。
時間効率的にも1週間以内に決済しやすくなるタイムスパンだ。

これは実質的に上位の波の到達点を環境認識として踏まえながら、下位の推進波動をNの形でフォローしているということになる。
そしてあくまでも直近のNの値幅を1波等倍エネルギーと定義することで、遠くを狙いすぎることがない。
それによって押し戻りの値動きに翻弄されることが少なくなる。

この上位と下位の関係はフラクタル的で、最終目標に至るまでの間を小さな波の回転で把握していることになる。
だから構造否定の1波とその3波到達位置は上位のサイクルを否定しない。
本稿で言う「構造否定」とは、価格の上下そのものではなく、それまで有効だった「説明構造」(=戻り高値が機能する、トレンドラインが支配する等)が成立しなくなった地点を指す。
つまり値動きの可能性を否定するのではなく、新たな分岐に入ったという認識を取るのだ。
また重要な観測軸の固定として、上位の合意を見るという点がる。

【構造否定ライン(S)】
「直近の戻り高値」の水平線(画像の黒水平線)

【構造否定の1波】
A. H4条件(必須)
・H4足が 実体終値で S を上抜け(ヒゲ抜けは除外)
・できれば同足〜直後で 短期20MAの上に終値が残る
B. D1条件(ベスト)
・日足も 実体終値で S を上抜け
・そのSが、日足の直近数本の実体位置としても揃っているほど強い
この構造否定の波でカウントすると、黒斜線の5波動が描ける。ここからは次の段階に移る。
エントリー候補となるのは水色四角部だが、5波動後の観測として把握している構造の階層を一段上げるという整理が必要になる。
画像で青線で描かれているのは、黒チャネル底に向かう大きな底ねりの動きだ。
これを認識する必要がある。視野を拡大するのだ。
そうするとこのチャネル底のうねりを構造的に否定するラインが新たに引かれる。
この画像で引いた黒水平線も日足ローソクの実体が揃っているのでここに引く。
先ほどまでと同じ構造否定の考えで得られる仮の1波としては、黄緑色の波か、赤色の波だ。
またこの考えによらずに見れば青波の1波もある。これは最上位のスケールで見た上位階層の波となる。
この内、赤波はこの流れの中では優先順位が低くなる。
私は初動の5波動を先ほどの黒線の波で把握したあと、その構造否定の波全体を内包する波を次に生まれる波としてスケールアップする。
だから赤波は否定はされないが候補からは外れるという扱いになる。この赤波を採用する場合は別のシナリオが必要になるというわけだ。

そして残る青波と黄緑波はそれぞれ構造否定の対象が局所的であるか青波の大局的なうねりかという違いになる。
初動の波の後には大きな波が来る。ダウ理論でいうところの主要なトレンドであり追従期の波だ。
大きな波を見るには構造階層を上げて把握する必要がある。
この2つの波は青波を支配波とし、その内側に内包される黄緑波を継承波としてフラクタル的に同時に扱っているということだ。
ここで黄緑波が否定している局所的な波とは、先ほどの画像の中に描かれた黒波5波動後の調整だ。
この画像で言えば黄色四角部となる。この5波動は高値と安値の切り上げが見られ、市場の合意も暗に読み取れる。
そしてこの否定によって得られた市場合意の上昇は押し目を確定させ、局所否定の黄緑波と大局否定の青波の一致によって直近高値を超えたところから大きく推進することになる。
この時の目標ラインへの到達を見ると、赤水平線はやはり同じ構造把握の理論からヒゲ先だけでなく日足実体ラインの2本が引ける。

【波の優先順位の整理】
トレード戦略を構築するうえで、どの波を基準にすべきかを明確にするために、以下の優先順位を設定する。
- 黒波(初動の5波動):起点確認用(構造否定の成立)
- 黄緑波:実戦回転用(最も合意が乗りやすい)
- 青波:大局否定、利益最大化用(下位合意が積み上がった後の出口戦略)
→ 赤波:構造は見えるが初動とは分離。別シナリオ候補。


実際の価格はそこに到達するまでにそれなりの期間を要しており、何となく戻り高値を目標値にするとなかなか届かないというストレスに見舞われる。
直近のNを取りに行くという思想はダウ理論の基礎に基づくもので、最も合意形成の得られる波動となる。
したがって黄緑波も青波も大きなストレスと長い期間を要することなく目標地点へ到達することができた。
実トレードにおいては黄緑波で局所否定することをエントリー理由にして、青波を伸ばす理由に据えると2つの波のいずれも否定することがない。
最後に出口戦略としては、黄緑波位置到達後の調整が短期MAに近づく。
終値で短期MAの上にしばらく支えられていることを確認したら、青波に向けて利確目標を昇格するという流れにすれば入口から出口まで2つのフラクタルを管理できる。


【フラクタルとしての整理】

フラクタルとはつまり「同じ型(1-2-3や押し目→再加速)が、スケールを変えて繰り返し現れる」こと。
・エリオット波動:フラクタルな形のテンプレ(1-2-3-4-5)
・構造否定の波:その形が「どこで生まれるか」を決める起点ルール(何を否定したか)
・上位/下位:フラクタルの「階級」の切り替え
・優位性の低い波:フラクタル形は見えるが、階級の整合や合意が弱い=ノイズ寄り

【カオスとしての整理】

カオスの本質は「決定論的なのに、初期条件に敏感で、見かけ上ランダム」という相場そのものの姿。
・同じ“1-2-3の形”に見えても起点の取り方(初期条件)が少し違うだけで、到達点や時間が大きくズレる
・そのズレを「間違い」と扱うと破綻する


【構造否定フラクタル理論】

・構造否定=初期条件を固定する(どの構造を否定したかで階級を揃える)
・日足終値承認=ノイズを落として初期条件を強くする
・優位性の低い波を別シナリオ扱い=カオス由来の分岐を“誤り”ではなく“分岐”として管理する
・昇格条件(黄色3波到達→20MA終値で合意形成)=分岐の後に「大衆の合意」が乗った枝だけ採用する


カオスを「当てる対象」にせず、分岐を前提にして採用する枝を選別する設計にしているところがこの理論の要となる。
そして構造否定は対象で階級が決まる。
エントリーは下位(黒波や黄緑波)で再現性を確保し、上位(青波)に昇格した時だけ利確目標をスケールアップする。


というわけでこの理論を手法化してまとめる。

【構造否定フラクタル手法】
「上位足の構造否定で方向の合意を取り、下位足の1〜3波で回転し、さらなる合意で上位目標へ昇格するフラクタル設計」
そして本手法は未来を当てることを目的としない。分岐の中から、市場の合意が確認された構造だけを採用する設計である。

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