トレードを管理する
ーリスクリワードの誤解と「手仕舞いの本質」ー
トレーダーがチャート上でできることはあまりない。
トレードをするかしないかの判断と、トレード中の経過観察、そして手仕舞いである。
突き詰めればこの三つだけだ。
それにもかかわらず、トレードは複雑に語られすぎている。
特に「リスクリワード」という言葉は、理解したつもりで誤解されやすい。
リスクとは損失、リワードとは利益。リスクリワードレシオとは、期待損失と期待利益の比率だ。
一般には「1:2」「1:3」が望ましいと言われる。勝率が低くてもトータルでプラスになるからだ。
だが、ここに落とし穴がある。
多くのトレーダーは損切はここで利確はここだと事前にラインを決めることで、トレードを管理した気になっている。
①過大な利益を妄想せずに確たる判断材料を元に明確な決済ラインを設けることでトレードの質を高める
②想定とは違った値動きを見せた場合に、過大な損失を防ぐための資金防衛を徹底することで口座資金を安定して守る
これは半分正解で半分間違っていると思っている。
問題なのは、波の大きさを無視して数値だけを先に固定してしまうことだ。
チャートは1:2や1:3で動いているわけではない。波にはサイズがあり、構造があり、否定点と完結点がある。
波を無視して数値だけをあてはめた瞬間に、それはチャート本位ではなく、自分本位のトレードになるのだ。
管理とは「コントロールできている状態」のこと
管理とは何か。それは、ポジションが常に自分の管理下にある状態を指す。
トレード前に
・エントリー根拠
・損切り
・利確
を決めるのは、トレードを管理下に置くためだ。では、その管理が外れる瞬間はいつか。
それは、自分ではコントロールできない時間帯に入るときだ。典型的なのが、週末の持ち越しである。
管理が外れる瞬間
あるポジションを保有しているとする。
例えば天底からの反転に乗り込んで含み益が100pipsにでも迫ろうかという状況だ。閉場直前の、まだ窓の外が暗い早朝にあなたは一人チャートを見ている。
どうやらこのまま放置して週末持ち越ししても利益はまだ伸びそうだと考えられる。根拠はある。例えば普段から監視している1時間足でいつものように観察しているが、陰線が連続しており相場のモメンタムは途切れていない。
自らの分析によるところのネックラインにはまだ少しゆとりがある。利益確定ラインまで伸びていけばさらに25pipsから35pipsくらいは上積みできそうだ。
すでに100pipsの含み益があるし、ストップは建値に移動させているから、仮に多少戻しても大丈夫だろう。あと20pips上積みできれば今月の儲けは目標に届きそうだからぜひともものにしたい。
こんなことを考えながらチャートを見ている。
「このまま持ち越しても大丈夫そうだ」
「週明けにもう一段伸びるかもしれない」
そう考えた瞬間、トレードは管理外に出る。
週末の間、価格は完全にコントロール不能だ。窓が開けば、ストップは意味を失う。
この時点で、事前に決めたリスクリワードは崩壊している。
ここで顔を出すのが、希望だ。
リスクリワードが崩れる瞬間
利益を期待し、損失を過小評価し、「ストップがあるから大丈夫だ」と自分に言い聞かせる。
だが、含み益も含み損も、決済するまではすべて仮定だ。潜在的で、未確定で、市場のものだ。
リスクリワードを考えるとは、潜在的な利益と潜在的な損失を、常に管理できているかを問うことだ。
管理できない状況に入るなら、その時点で手仕舞いすることは逃げではない。合理的な判断だ。
手仕舞いこそが管理
トレードとは、エントリーして終わる行為ではない。手仕舞いまで含めて一つの行為だ。
エントリー根拠と保有中の判断と手仕舞いの判断が同じ時間軸、同じ波、同じ前提で貫かれているか。
手仕舞いだけ別ルールになった瞬間、トレードは管理を失う。
規律あるトレーダーが一貫した成績を残せるのは、すべてのポジションを最後まで管理下に置いているからだ。
リスクを想定してリワードを期待するのと、リワードを確定してリスクを回避するという違いである。
短期トレーダーはこういったメンタルで相場に臨むが、スインガーとなると週末持ち越しも含めたポジション管理が必要になるのでスインガーに対しては別の考え方になるということは留意されたい。
そして常にチャートを監視することが経過観察ではないということも但し書きしておく。
数値ではなく、波を基準にする
1:2や1:3という比率は、計算上の持続可能性を示す指標にすぎない。チャートは、その比率を守って動いてはくれない。
波の中を切り取って1:2や1:3に当てこもうとすると、その切り取った枠外の波の動きは想定外ということになる。
なぜなら1のリスクに対して2のリワードを期待する時、その1が口座残高に対しての場合とpipsに対しての場合で、明確にその波の切り取る枠の大きさが変わるからだ。
100のサイズで動く波の中の20の枠の範囲でリスクとリワードを求めることは波の値動きを無視した範囲設定だ。
なぜなら100のサイズで動く波の期待値は20の枠の範囲を遥かに超えている。そしてその潜在的損失もまた然りである。
波のサイズに対して
・損切りは波形を否定するポイントか
・利確は一度波が完結しやすい場所か
それが重要だ。
ロットとは、波のサイズに合わせてリスクを調整するための道具だ。利益を無理に作るための道具ではない。
自分本位ではなく、チャート本位で考える。それが、本当の意味でのリスクマネジメントだ。
管理できているトレードとは
・ポジションが常に管理下にある
・管理できない時間帯に入らない
・波の構造に沿って損切りと利確が置かれている
・手仕舞いまで同じ前提で貫かれている
これができている時には、不思議なほどストレスがない。
トレーダーはチャートを支配しない。抗いもしない。ただ、波に合わせて帆を広げ、自分を調整する。
それができたとき、リスクリワードは「考えるもの」ではなく、結果として現れるものになる。
― リスクリワードの自己点検チェックリスト ―
【チャート本位でトレードできているか?】
① そのリスクリワードは「数値」から決めていないか
1:2、1:3という比率を先に決めてチャートを当てはめていないか
pips数や金額が、波のサイズと無関係に固定されていないか
YESなら→ それは計算本位であって、チャート本位ではない。
② 損切りと利確は「波の否定点・完結点」になっているか
損切りは「許容できる損失」ではなくこの波が成立しなくなる場所か
利確は「欲しいpips」ではなくこの波が一度完結しやすい場所か
感情や願望が基準になっていたら、管理は崩れている。
③ そのポジションは「今も管理下」にあるか
閉場・週末・指標などコントロール不能な時間帯に入ろうとしていないか
「ストップを置いているから大丈夫」という管理している“つもり”になっていないか
管理できない時間に入るなら、手仕舞いは合理的判断である。
④ いま見ている含み益は「確定したもの」だと錯覚していないか
その利益はまだ仮定でありまだ潜在的でありまだ市場のものではないか
利益を守る判断と、さらに利益を期待する判断を混同していないか。
⑤ その枠の大きさは「自分都合」で切り取っていないか
大きな波の中に、都合のいい小さなリスクリワード枠を無理やり当て込んでいないか
「この枠の外は想定外」と後付けで無視していないか
枠を動かしているのが自分なら、それは自分本位。
⑥ 波のサイズに対して、ロットは適切か
波が大きいのにロットが大きすぎないか
波が小さいのにロットで無理に利益を作ろうとしていないか
ロットは波に合わせてリスクを調整するための道具であって、利益を無理に引き伸ばす道具ではない。
⑦ そのトレードは「最後まで一貫しているか」
「エントリー根拠」 「保有中の判断」 「手仕舞いの判断」
これらが同じ前提(同じ波・同じ時間軸)で行われているか。
手仕舞いだけ別ルールになった瞬間、トレードは管理外に出る。
チャート本位のトレードとは、利益を期待することではなく、そのポジションが常に管理下にあるかを問い続けることなのだ。
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