フラクタルの世界②

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構造否定フラクタル理論 ver.3

― ver.2からの改訂と、波動論への展開 ―

当ブログではずいぶん前にフラクタルの世界①という記事を書いた。
この時点で、過去から現在に至る時間の推移の中に生まれる自己相似性を考察していたし、支配波と継承波という捉え方もしていた。
私の中での理論構築はここからさらに進んでいって、過去の考察を改めたり、より深化させてくることができた。
今回は相場のフラクタルと波動観測の整合性から考察を深めたいと思う。
相場は、分類によって理解できるほど単純ではない。
ローソクの振る舞いはカオス的であり、私たちが観測できるのは、その振る舞いが残したフラクタルな痕跡だけだ。ここで誤りやすいのは、「痕跡に名前を与えること」が「振る舞いを理解したこと」だと錯覚してしまう点にある。

エリオット波動論は、相場の運動を波の連なりとして語る強力な説明体系である。だが、説明体系は本質的に「後から整える自由度」を持つ。ジグザグ、フラット、トライアングル、複合修正…。分類が増えるほど、過去の波形は美しく説明できてしまう。
そして人は、説明できた瞬間に「理解した」と感じる。理解できたと思うほど、次は「当てられる」と感じる。ここに、説明体系をそのまま意思決定に流用してしまう思考の構造が生まれる。

しかし、説明と予測は違う。
説明は語れることであり、予測は選べることである。相場は常に分岐しており、どの道が選ばれるかは現在の観測だけでは確定しない。にもかかわらず、分類によって未来まで確定したように錯覚するなら、その行為は「理解」ではなく「安心」の調達に近い。分類が増えるほど安心は増えるが、意思決定は鈍り、分岐は増殖する。

だから私は、波を分類する前に、観測軸を固定する。
相場の説明を増やすのではなく、相場の説明が成立しなくなる地点を定義する。旧構造が維持できなくなる点――構造否定ラインS――を置き、終値でそれが否定された事実をもって「構造否定の1波」を確定させる。ここで重要なのは、天底から数えるかどうかではない。重要なのは、旧い立場が破綻し、新しい立場に移行せざるをえないという、相場側の事実である。

そして、整合性は「結果が当たったか」ではなく、「立場が一貫していたか」で測る。
構造否定の1波が成立し、その波を基準に3波が到達する(Nが完成する)。この再現性の高い自己相似を確認できたとき、私は初めて波が確定したとみなす。
言い換えれば、私は波を当てにいかない。構造否定の前/後を観測し、破綻した説明を捨て、到達で検証を閉じる。説明体系を「語り」の領域に留め、意思決定体系としては、分岐を閉じる条件だけを採用する。

分類は、理解の代用品になりやすい。
だが相場で必要なのは、分類の精度ではなく、観測軸の固定と、意思決定を閉じる条件である。
相場は予測ではなく認識――この立場を守るために、私は「構造否定」という事実から波を確定する。

1. ver.2の立ち位置

前回の記事で纏めた構造否定フラクタル理論 ver.2 は、相場を「上下の時間足」だけでなく「過去→現在」という時間推移の中で捉え直し、終値(実体)による合意を観測軸の中心に置くことで、カオス由来の分岐を「誤り」ではなく「分岐」として管理し、最後に「大衆の合意が乗った枝だけ採用する」という昇格条件を持っていた。
また、上位足の実体が揃う価格帯(ネックライン)を合意の根拠とし、上位>下位、実体>ヒゲ、複数本>1本という優先順位を明示している。

この枠組みは強力だが、エリオット波動論との比較を進めると「上位構造での扱い」において、次の問題が前面に出てくる。

2. ver.3で解決したい問題

2-1. 「説明体系」と「意思決定体系」の混同

エリオット波動は、相場を波として説明する体系としては強い。だが、説明体系をそのまま意思決定に流用すると、分類(ジグザグ/フラット/複合等)の自由度が増えるほど分岐が増殖し、結果として「どれでも説明できる」に陥る。
これは相場観測の恣意性を高め、意思決定を鈍らせる。

ver.3ではここを明確に切り分ける。

  • 構造否定フラクタル=意思決定体系(分岐を閉じる条件を優先する)
  • エリオット波動=説明体系(俯瞰や整理に使うが、分類で意思決定しない)

2-2. 下位構造が上位構造に吸収される問題

下位で成立した「構造否定1波→3波到達(N完成)」が、上位から俯瞰すると全部まとめて上位1波の内部に吸収される。
さらに上位の3波は、合意が乗ることで伸びやすく、下位と同じ画一的扱い(3波=1波等倍で終了)では実戦に合わない。

上記のチャートにおいて、下位構造否定ラインSを超えた構造否定の1波からなる5波動は、上位1波に吸収されている。

ver.3は、この吸収と伸長を矛盾ではなく仕様として取り込む。

3. ver.3の追加概念①:カオス波動(不可分区間)

3-1. 定義

カオス波動とは、検証対象となる「構造否定の1波」の起点以前から、旧構造(上位合意)の天底(極値)までの間に存在する価格変動区間を指す。
この区間は、現行時間軸では内部波動の再分解(カウント)を行わない不可分区間として扱う。

底値から構造否定1波までの間の赤四角枠内の波=カオス波動
カオス波動は「説明不能」ではなく、説明の自由度が高すぎて意思決定を汚染するため、現行足では不可分として隔離する。

3-2. 役割

  • リスク定義
    旧構造の到達目標に達した後の調整であり、分岐が集積して期待値が低い領域として扱う。原則ノートレ。
  • 合意帯(密度)の形成
    押し安値/戻り高値/実体の重なりなどの反応集積を“密度”として観測し、後に構造否定が発生した際の到達目標・否定基準の材料にする。

3-3. 運用規約(原則と例外)

  • 原則:カオス波動中は新規エントリー禁止
  • 例外:下位足へ階層を移した場合のみ、下位構造で
    • s(直近戻り高値・実体水平)を終値ブレイク
    • 下位短期20MA上で終値維持
      が揃ったときに限り新規を許可する。
      (パターン認定は恣意性を招くため“解禁根拠”にしない。補助説明に留める)

※この「同一時間軸で再分解しない/再分解するなら階層を下げて別検証にする」という縛りが、説明体系の自由度を意思決定に持ち込まないための核心になる。

4. ver.3の追加概念②:次数昇格(D1実体合意)

ver.2でも「昇格条件=大衆の合意が乗った枝だけ採用する」という思想があった。
ver.3ではこれを、上位構造の運用として明文化する。

4-1. 昇格トリガー

上位S(上位実体合意の否定ライン)を、D1実体終値でブレイク確定したとき
ここで「大衆の合意」が発生したとみなし、次数昇格を行う。

昇格トリガー
  • 下位で起きていた一連(カオス波動+下位構造否定3波+その後の5波)は、上位では上位1波形成過程に吸収されてよい
  • 吸収は理論の破綻ではなく、「カオス収束によるノイズ減少」として理解する

4-2. 起点と確定点を分離する

上位は、底値を起点に置ける。しかし、転換が市場全体に合意されるのは D1実体で上位Sを否定した瞬間である。
よって ver.3 では、

  • 起点(底)=事後確定
  • 確定点(D1実体で上位S否定)=合意確定

として分離する。
これにより「直接の波」概念を上位に機械的適用して生じていたズレを解消する。
ズレとは、1波等倍をもって3波の完成とする見方は理論として成立するが実戦では上位構造の3波は伸びやすいことを指す。
このギャップが「直接の波」概念の機械適用によるズレ。

直接の波という概念が上位構造にもたらすズレ

5. 構造否定フラクタル波動論:共存としての「5波」


ver.3 は、エリオットを「意思決定の根拠」ではなく「俯瞰の整理」として共存させる。

5-1. 下位フェーズ(意思決定:構造否定1→3)

  • 構造否定1波を観測軸として固定
  • 構造否定3波で Nが成立(整合成立)
  • その後は 5波動観測(内部再分解はしない) をもって一区切りとする

5-2. 上位フェーズ(合意推進:上位3は伸びやすい)

D1実体で上位Sをブレイクした場合、底値から俯瞰した上位1波が定義できる。
このとき上位の3波は「合意が乗る」ため伸びやすい。これは矛盾ではなく、合意の増幅である。

ここで重要な改訂はひとつ。

N到達(3波が1波等倍を吸収)は終了条件ではなく最低成立条件(整合成立)である。

伸びるかどうかは、別の否定条件で管理する。
したがって上位合意が乗った局面では、3波は伸長し得る(矛盾ではなく仕様)。

6. 上位統合の意思決定ルール(D1で生死、H4で管理)

ここで ver.3 は、上位構造を画一的に扱えるようになる。

6-1. 上位シナリオ否定(D1)

  • 上位1波の押し安値を、D1実体終値で割ったら否定
本事例では旧構造の上位構造否定ラインSが転換後の上位1波の押し安値ラインと整合している

→ 上位の生死は D1 実体で決める。これが合意の軸。

6-2. 上位3波伸長の追随終了(H4)

  • H4押し安値を、H4実体終値で割ったら追随終了

→ 伸長は起こり得るものとして追随するが、降りる条件は H4 の一意な押し安値で閉じる。

この二層で、
D1=合意(シナリオの生死)/H4=管理(利益の生死)
が固定され、分岐を増やさずに実戦に落とせる。

7. ver.3の要点(まとめ)

  • カオスは「説明不能」ではなく、説明の自由度が高すぎて意思決定を汚染するため隔離する
  • 下位の構造否定は転換を先に確定する装置、上位のD1実体否定は合意が乗る装置
  • N到達は終了ではなく整合成立(最低条件)。上位3波の伸長は仕様
  • 上位の生死はD1押し安値割れ、伸長追随の終了はH4押し安値割れで閉じる
  • エリオットの5波は「俯瞰整理」として共存するが、分類を意思決定根拠にしない

補記:ver.2からの連続性

ver.3 は ver.2 の核心――
「構造否定=初期条件固定」「終値承認」「上位合意優先」「分岐を誤りでなく分岐として扱う」「合意が乗った枝を昇格させる」――を保持したまま、
上位構造における吸収と伸長を理論内の仕様として明文化し、エリオットとの関係を「説明体系としての共存」に再配置した改訂である。

以上の整理をもって、上位構造の1波等倍エネルギーの吸収地点としての3波の振る舞いが下位構造とズレなくなり、実際のチャートの推移からみても取りこぼしのない実戦向きの理論となったと思う。
構造否定フラクタル理論はver.3となってより強固になり、カオス波動と下位構造否定波動までを下位フェーズとした波と、その先の上位フェーズへつながる上位構造否定1波からなる合意推進波動へ繋がるという波動論体系が構築できた。
上位↔下位の自己相似性も破綻しない
これまでの理論構築の道のりを考えると、今回の記事はよりマニアックでディープな考察となったし、いきなりこの記事に触れると何がフラクタルなのかも分からないかもしれない。
そう思ったら、こんな考え方をするトレーダーもいるのだと笑ってほしい。
順を追ってみると実はきちんと破綻なく繋がった理論体系の一部なので、読み込めば理解してもらえると思うが、どちらかというと私自身の整理であるから他者への理解は求めていないのが奥ゆかしい所と思ってもらえれば幸い。

相場のもたらす自己相似性をこうして理論的に解釈できるようになったことは、私自身のトレード人生において無類の価値となった。
カオス的振る舞いを分岐として扱うことや、波の整合性を固定された観測軸から捉える姿勢を持つこと、波を分解しすぎない許容性などは相場との距離感の確保にもつながると信じている。
ここに参考として心理学的・認知学的なインプットを置いておく。

1) 「分類できた=理解できた」と感じる

  • 理解の錯覚
    「分かった気がする」けど、いざ仕組みを説明しようとすると浅い…という錯覚。
    波動に名前が付くと理解した気になるような事象。
  • 流暢性ヒューリスティック
    頭の中でスムーズに処理できる(ラベル化できる)ほど「正しい/分かった」と感じやすい。
    「これはジグザグだ」って言えた瞬間に脳がスッキリして、真理に近づいた錯覚が生まれる。
  • 名付けの錯覚
    名前を付けると説明した気になる。「名前=原因」みたいに扱ってしまう。
    フラットだからこうなるみたいに、ラベルが予測力を持つかのように錯覚する。
  • (近縁)再認のヒューリスティック代表性ヒューリスティック
    似た形を見つけると「同じ結果になるはず」と思いやすい。

2) 「理解できたと思う→勝てると思う」に繋がる心理

ここはトレードあるあるで、次の組み合わせが起きる。

  • 過剰確信
    説明できると 当てられる”を同一視して、自信が過大になる。
  • 制御の錯覚
    複雑系に対して「自分はルールを掴んだ」感が出ると、コントロールできると思い込みやすい。
  • 後知恵バイアス
    チャートは後からならいくらでも整う。整った説明を見ると「最初から分かるはずだった」と感じる。
私自身、今回の理論構築によって、相場を理解できたような気になった部分が確かにある。
だから相場全体を確信的に取り扱うことは慎まねばならないと思うので、波動の細かな内部分解はしないことにした。

ただの自己相似なのだ。それはチャートパターンのように幾何学的であり、フィボナッチのように数学的であり、そして同じ失敗を繰り返すトレーダー自身の振る舞いのように認知学的でもある。
これは難しいことだろうか。
たとえ難しくても最後に相場に現れるのは、もっとも純粋なNの形のフラクタルである。
私たちはそのNの風に帆を立ててそ、の波間について行くのだ。


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